Song 01 / 制作ノート

大学時代からの親友夫婦へ贈った、星野源『喜劇』へのリスペクトを込めたアンサーソング。

Artist
ion
Genre
Pop
Length
3:53

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大学時代からの親友・良太と、妻の里予ちゃんに贈った曲です。

ふたりが敬愛する星野源さんの『喜劇』を土台に、離れた席で動画を送り合った教室から、今の少し狭い1LDKまでの日常を、良太の目線で描きました。目指したのは「何回でも聴ける曲」です。

01「喜劇」の哲学を、二人の人生へアダプトする

──まずは、この『ふざけたステップを踏んで』という楽曲の成り立ちから教えてください。

ion出発点としては、良太からこれまでの二人のエピソードや思い出をヒアリングして、それを僕が歌詞に書き起こすというアプローチでした。ただ、僕の中で絶対にやりたかった「設計思想」があって。それが、二人が大好きな星野源さんの『喜劇』への徹底的なリスペクトだったんです。

──『喜劇』へのリスペクトというのは、サウンド面や曲調のことですか?

ionもちろんサウンド面でのアプローチもあるんですが、一番は「思想の継承」ですね。星野源さんが『喜劇』という楽曲で提示した「家族の形」や「愛の形」って、ものすごく普遍的な概念だと思うんです。生きていると理不尽なことや、しんどいことがいっぱいあるけれど、血の繋がりを超えた二人が手を取って、どんなに辛いことがあっても笑い転げて生きていく。自分たちの手で、人生を「喜劇」に作り上げていくんだ、というスタンス。僕自身、そこにものすごく共感していて。

だから今回は、表面的なオマージュではなく、その『喜劇』の設計思想をベースに置きつつ、歌詞のディティールを二人のこれまでのイベントや人生に完全に「カスタマイズ」というか、アダプトさせたかったんです。

──普遍的なテーマを、徹底的にパーソナルな日常へと落とし込んでいったと。最初の《誘い出された夜の街 / 白いシャツが眩しくて》という出会いの描写から、すでに具体的な映像が浮かんできます。

ionディティールにはものすごくこだわりました。というのも、僕は二人の大学時代からの友人で、良太とは本当に親友なんです。だから、出会った当時のこともリアルタイムで知っているし、彼らから話を聞いたときに、僕の頭の中でその情景が鮮明に映像として再生されるんですよ。だから《白いシャツが眩しくて》という視覚情報だけで、当時の初々しい高揚感をバシッと切り取ることができた。

──続く《画面越しに送る動画で / 離れた席で笑い合う》というシーンも、非常に立体的ですね。

ionこのシーンも、ただヒアリングして「そういうことがあったんだ」と想像して書いたわけじゃないんです。実際に彼らが大学の大きな教室で、席が離れているのにこっそりお笑いの動画を送り合っている光景を、僕は知っているし、容易に想像できるんですよ。動画を送って笑いを堪えている里予ちゃんの表情も、それを見てニヤけている良太の顔も、僕の脳内には鮮明に浮かんでいる。だからこそ、「席が離れているのに、見えないところでしっかり繋がっている」という、二人特有のユーモアの共有をリアルに描けたんだと思います。

──そこから《走れば間に合うはずの終電を / 見送ったのは 秘密の始まり》へと繋がります。この「あえて見送る」という表現が、二人が明確な共犯関係になった瞬間をドラマチックに捉えています。

ionええ。「単なるラブストーリー」にする気は全くなくて、本当に日常のワンシーンの積み重ねで二人の関係性を表現したかったんです。終電を見送ったあの夜が、二人だけの「秘密」の始まりだった。そういうリアルな感情の動きを過去から追っていくことで、この先の彼らの人生を描写するための強い土台ができたと思っています。

02悲劇を「喜劇」に塗り替える、究極のパートナーシップ

──そして楽曲のハイライト、タイトルの由来にもなったサビの《例え辛い夜だって / ふざけたステップ踏んで》です。これは本当に見事なフレーズですね。

ionありがとうございます。ここがまさに、僕が二人のエピソードを聞いていて一番好きだった部分であり、この曲の「核」です。二人にとって「喜劇を作る」って、お金がたくさんあるとか、「愛してる」と毎日囁き合うとか、そういうことじゃなくて。良太が仕事で極限までしんどい夜に、ただ「頑張って」と声をかけるんじゃなくて、里予ちゃんがあえて「ふざけたダンス」を踊って笑わせてあげる。そのちょっとした気遣いにこそ、相手を本当に大切にする気持ちや、思いやりの根本が滲み出ているんです。

──悲劇になりそうな夜を、二人で強引に「喜劇」へと塗り替えていく。見事な関係性です。

ion僕はそのエピソードを聞いた時、一生懸命ふざけたステップを踏んでいる里予ちゃんの動きまで鮮明に想像できましたから(笑)。大きなテーマ(喜劇・家族)であるように見せかけて、実はすごく細かい、相手を想うささやかな言動の積み重ねでできている。それを表現するためには、このフレーズを絶対にサビの中心に置きたかったんです。

──2番に入ると、日常の解像度がさらにグッと上がります。《魔法みたいな言い間違い》という表現も素晴らしいです。ただの間違いを「魔法」と呼ぶところに、深い愛を感じます。そして多くのリスナーが鳥肌を立てるのが、2番のBメロです。《夕暮れを逃した貸切の部屋 / 少し狭い1LDKから / ボーダーシャツをそっと脱ぎ捨てて / ここから始まった僕らの Love story》。この展開の美しさは圧巻でした。

ion実はここ、現実の空間をあえてミックスしているんです。「夕暮れを逃した貸切の部屋」というのは、良太がプロポーズをした淡路島の貸別荘のこと。そして「少し狭い1LDK」というのは、彼らが今住んでいる家のことなんです。本当は婚約前から同棲したかったけれど、親御さんへの筋を通すために結婚前にはできなかった。だから、プロポーズをしたあの特別な空間と、念願叶って暮らし始めた現在の1LDKの情景を重ね合わせているんです。

──なるほど!過去の特別な空間と、現在の日常の空間が交差しているんですね。そこで登場する《ここから始まった僕らの Love story》という言葉も、単なるラブソングの常套句ではないと。

ionその通りです。ここで言う「Love story」というのは、いわゆる“ラブラブな恋愛の歌”という意味ではなく、プロポーズを経て「愛の誓約=結婚」へと繋がり、家族としての物語がここから始まったんだ、という明確なポイントとしての「愛の物語」なんです。

例え辛い夜だってふざけたステップ踏んで
『ふざけたステップを踏んで』 Chorus

03些細な日常を“心の中で抱きしめる”ということ

──そこから続く2番のサビでは、《すりガラス越しの声が 今日の出来事を歌う》というフレーズが登場します。

ionはい。ここはお風呂のすりガラス越しに「今日こんなことがあってね」と話しかけてくる何気ない雑談を描いているんですが、本当にありふれた日常のワンシーンをあえて切り取って入れています。特別なイベントが起きなくても、こういう生活の中の些細な会話の積み重ねすら、彼らにとっては毎日の美しい「歌」になっているんだということを表現したくて。

──日常のワンシーンを、ただの雑談ではなく「歌」として切り取ったわけですね。そしてその後に続くCメロの《人混みに消える改札から 覗くその顔が たまらなく愛おしくて》という描写も、非常にインティメイト(親密)で胸を打ちます。

ion僕の中には、「喜劇」という人生の大きなテーマは、日常の些細な積み重ねのディティールでできているんだという思想がずっとあって。そして、良太も里予ちゃんも、そのことを本当によくわかっている二人なんです。

毎朝の改札で一瞬振り返るとか、そういうちっちゃい行動を積み重ねてくれる里予ちゃんと、それを日常の当たり前で終わらせずに、ちゃんと噛み締めることができる良太。この《たまらなく愛おしくて》というフレーズは、良太が彼女のそういう些細な行動を「心の中でぎゅっと抱きしめている」姿を表現したかったんです。その愛おしさを、どうしても強めに持ってきたかった。

──その直後に《いつも無くしものばかりの僕だけど / これからも呆れずに 隣で探してほしいんだ》と続きます。ここは良太さんの人間味が溢れていますね。

ionそうなんです(笑)。良太って、よく物を無くしたり、ちょっと頑固な部分があったりして。決して完璧な人間じゃないんです。でもそれって、辛いことでも悲しいことでもなくて、すごく人間らしい部分なんですよね。「ちょっと情けない部分もあるけど、それも受け止めてこれからも呆れずに付き合ってね」という、良太なりの少し甘えた気持ちも入れたかったんです。お互いの不完全さを受け入れ合うこともまた、喜劇を作っていく上での大切な要素ですから。

──そこから最後のサビに向かうわけですが、ここでハッとさせられる言葉の変化があります。これまでのサビは《今日は何を食べようか》だったのに対し、最後のサビだけ《明日は何を食べようか》に変わっていますよね。

ion気づいてくれて嬉しいです。そこはすごく重要なポイントで。1番や2番では「その日の出来事」、つまり「過去から現在」に至るまでの日常の積み重ねを描写してきたんですが、最後のサビからは、これから先の未来に向かって歩んでいく「二人の旅路」を描きたかったんです。だから「今日は何を食べようか」を「明日は何を食べようか」に変えました。過去、現在、そして未来へと、時系列が進んでいく表現にしたかったんです。

04時系列に隠された一貫性と、散りばめられた音楽のピース

──出会いから未来へと時系列が進んでいく。その構成の美しさに圧倒されますが、実はずっと変わらないものが一つあるんですよね。

ionそう、時系列の中に「たった一つだけ、ずっと変わっていないもの」を隠しているんです。冒頭で話した、1番のAメロ《離れた席で動画を送り合う》シーンを思い出してください。あの描写をなぜ一番最初に入れたかというと、彼らの「相手を笑わせたい」という根本のスタンスが、あの頃からすでに出来上がっていたことを伝えたかったからなんです。

物理的に離れた席から、内密に動画を送り合ってクスクス笑う。どうしても相手を笑わせたい。時代やシーンは変わって、大人になって、辛い夜にステップを踏んで笑わせるようになったけれど、やっていることのベクトルは同じなんですよ。「相手を思いやり、少しでも楽しませたい、幸せにしたい」というこの二人の『喜劇』のスタンスは、実はずっと昔から、あの教室で完成していたんだよって。時系列は進んでいくけれど、共通のメッセージはずっと一貫して流れているんです。

──なるほど…!《ふざけたステップ》の原点が、あの動画を送り合うシーンにあった。すべてが一本の線で繋がった瞬間ですね。そして、もう一つリスナーを驚かせる仕掛けがあります。

ionはい。歌詞の解説が終わったこのタイミングで種明かしをすると、実は歌詞の随所に“あるピース”を散りばめているんです。『Photography』『Love story』『旅路』そして一番最後に出てくる『Family Song』。

──これらはすべて、お二人が結婚式で流していた思い出のBGMなんですよね。

ionそうなんです。ただの英単語のおしゃれな羅列じゃなくて、彼らにとっての大切な思い出の曲たちです。それを単に「結婚式の思い出話」として終わらせたくなくて、二人の生活の文脈の中に溶け込ませていきました。

心の中に焼き付いていく日々の『Photography』があって、プロポーズの『Love story』があって、これからも続く『旅路』がある。そして《明日は何を食べようか》という未来への視点から、《いつか新しい命と 3人で笑い転げて》という希望へ繋がり、究極の未来の着地点として《僕らだけの Family Song として》という完璧なエンディングを迎えるように設計しました。

──過去の思い出の音楽たちが、彼らのこれからの人生のテーマソングとして蘇っていく。その根底には、ずっと変わらない「相手を笑わせたい」という愛情が流れ続けているんですね。

ion彼らの毎日は、それ自体がもう美しい音楽なんですよ。それを一番近くで見てきた僕だからこそ、嘘偽りのない言葉で描くことができたと思っています。

──この曲をご夫婦にプレゼントされるわけですが、最後に、彼らに向けてメッセージをお願いします。

ion本当に一番近くで二人を見てきた僕だからこそ書けた曲だと思いますし、何より、あの二人だからこそ書かせてくれた特別な曲です。正直、歌詞を書きながらこれまでの二人の軌跡を振り返っていたら、「本当に幸せになってほしいな」って思いが溢れてきて、涙が止まらなくなっちゃったんですよね。こんな素晴らしい曲を作る機会を与えてくれて、二人には心から「ありがとう」と伝えたいです。

良太、里予ちゃん。二人が共に過ごしてきた何気ない毎日は、こんなにも愛おしく、素晴らしい喜劇です。星野源さんが歌った「新しい家族の形」を、二人はすでに自分たちの手で作り上げています。

結婚式のスピーチも任せてもらってその時にも想いは伝えたけれど、改めて。これから先、どんな辛い夜が来ても、二人なら絶対にふざけたステップを踏んで笑いに変えていける。この曲が、二人が迷った時にいつでも帰ってこられる、一生の色褪せない特別な場所になってくれたらと願っています。

アーティストとして、そして1番の親友として。これからもずっと、二人だけの、二人なりの喜劇を、そして人生を思い切り楽しんでいってください。

……あ、でもたまにはさ、そのストーリーに僕もゲストの脇役として混ぜてね。その時は全力で、助演男優賞を狙いにいくから(笑)。

歌詞全文

誘い出された夜の街白いシャツが眩しくて画面越しに送る動画で離れた席で笑い合う

「もしも誰かのものじゃなければ」ずるい言葉に救われていた走れば間に合うはずの終電を見送ったのは 秘密の始まり

手を繋いで帰ろうか今日は何を食べようか例え辛い夜だってふざけたステップ踏んで

僕以上に僕のこと想ってくれる君とただ笑い合う日々を続けていきたいな

魔法みたいな言い間違いに喉を鳴らして笑い転げる心に増えてく Photography甘えん坊と母親の行ったり来たり

夕暮れを逃した貸切の部屋少し狭い1LDKからボーダーシャツをそっと脱ぎ捨ててここから始まった僕らの Love story

手を繋いで帰ろうか今日は何を食べようかすりガラス越しの声が今日の出来事を歌う

いつか新しい命と3人で笑い転げてそんな未来があるなら楽しみで仕方がないな

人混みに消える改札から覗くその顔が たまらなく愛おしくていつも無くしものばかりの僕だけどこれからも呆れずに 隣で探してほしいんだ

手を繋いで帰ろうか明日は何を食べようか例え泣きたい夜だってふざけたステップ踏んで

どんな景色になっても君がいてくれるなら僕らだけの喜劇をずっとずっと演じていこう

どこまでも続くこの旅路をこれからも二人で歩いていこういつかこの歌を口ずさもう僕らだけの Family Song として

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作詞
ion
作曲・編曲・歌唱
Suno(AI生成)
ふざけたステップを踏んで
0:00 / 3:53